こんにちは、梅桃企画です。
新年のご挨拶がfacebookのみで失礼いたしました。
遅れ馳せながら、本年もよろしくお願いします。
さて、電子機器を新しく開発・設計して量産となりますと色々な試験を実施することが多くあります。
販売する国によっては試験にパスすることが必須ということもあります。
そんな中で「ESD」というと私達の業界では「静電気放電」を指します。
人が触ることの多い電気製品では、人体に帯電した静電気が電子機器に放電されることを前提とした試験を実施します。
冬になるとパチッ!と痛くてびっくりする、アレです。
電子機器に静電気が放電されるとどのようなことが起こるのか、というと、
・何も起こらない
良いことですね。
・誤動作したりフリーズしたりする
多く見られる課題です。
製品によっては危険な状態になる場合もあるので、しっかりフェイルセーフを考えておかねばなりません。
もちろん対策を打って「何も起こらない」ようにすることが一番です。
・壊れてしまう
最悪の場合は侵入した静電気によって、電子機器の部品(主にマイコンやその他半導体)が壊れてしまい、機能を果たさなくなってしまいます。
これも避けねばならない事態ですね。
これらの望ましくない状態を避けるための、最もポピュラーな対策は
ESD対策部品を追加する
ことでしょう。
部品メーカーも推奨していますし、効果も高いです。
設計の当初から「入れておく」ことがルールになっていることも多いと思います。
さて、これらのESD対策部品は一体何をやっているのでしょうか。
これらは壊れたり誤動作の元になる電子部品の内部に静電気が侵入しにくいように制限をかけたり、電源やグランド(またはアース)といったインピーダンスが低く部品が配置されていない場所へ逃がしてやる(流してやる)働きがあります。
電気は流れやすい場所を通って行く性質があり、その流れやすさを導電率(ρ)で表しています。
その逆数が流れ難さ=抵抗(Ω)ですね。(1/ρ=Ω)
電気も楽して流れたいので抵抗の大きなところは避ける(電流が流れにくい)という、その性質を利用して電子部品ではなく電源やグランドに逃がしてやるという訳です。
そこで一点注意があります。
せっかく電気を迂回させてやっても、その目指す先にマイコンなどが鎮座したりしていると、部品内部には入らなかったけれども通り道であるマイコンのグランドを揺すってしまい、マイコンが誤動作するということが起こりがちです。
逃した先のグランドが電子回路を迂回するように配線されていないと効果が低くなってしまいます。
放電された場合でも電子回路を迂回させ、できるだけ短距離で金属シャーシや大元の電源のグランドに配線したり、パターン設計をしておくことが大切です。
あともう一つ。
そもそも静電気が放電されないような構造にする
ことも大切です。
人体に帯電した静電気は、主に金属部分に放電します。
また人体(主に指でしょうか)との距離が遠い方が放電されにくくなります。
すなわち、
・金属部を隠す
・ラバーなど電気を通しにくい材質で覆う
・凹みを付けて距離を置く
・隙間を小さくする
など、製品として問題がない程度に筐体で対策することも有効です。
まとめると、ESDの対策は、
1.静電気が放電されない構造とする
2.放電された場合に基板内部に侵入されない放電ルートを設けておく
3.それでも基板に侵入されたらESD対策部品で保護する
という順番です。
電気製品のESD対策は、筐体担当と電気担当がタッグを組んで行うべきものなのです。